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【書評】『30と40のあいだ』瀧波ユカリ|価値観の変化を味わい、楽しむ

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いやー、面白かった!

普段エッセイは読みませんが、タイトルに惹かれて手に取りました。

まさに、いまわたしはアラサーで『30と40のあいだ』なもんですから。

前半…

前半は、同じテーマについてサー篇とフォー篇で分けて書かれています。

言わずもがな、サー篇は30代、フォー篇は40代のこと。それぞれで感じたことが綴られています。

わたしは30代なのでやはりサー篇に共感することが多くありました。でもフォー篇がまったく理解できないかというと、そうでもなくて。

まだ認めたくない(自分は若いんだ)みたいな壁が自分の中にあると感じざるを得えませんでした。

この本は、よく話題に上がる「初デートのお店問題」からはじまります。

チェーン店での初デートはどうなのか?というあの問題です。

  • 初デートなのに特別感がない
  • 安い店は冷める
  • 料理が特別美味しくない

これらは議論の際によく出る意見です。でもそんな表面的なことが問題ではないと著者は言います。

  • 初デートがチェーン店なら2,3回目のデートは一体どこになるのか
  • 彼にとって美味しい店=チェーン店、これはいかがなものか
  • 付き合い始めにいろんなお店に行くという楽しみの一つが期待できない
  • 彼のプライドを傷つけるからもっと美味しいところに行こうとは言えない

初デートがチェーン店問題について著者はここまで考えているのです。(ちなみにこれはサー篇)

「自分から愛するのと、愛されるのはどっちが幸せだと思いますか?」おい、この質問を送ってきた君。ちょっとここに座りなさい。

ー愛するか、愛されるか。

これについてもよく議論になります。

わたしもXでアンケートを取ったことがあります。

愛するか愛されたいか問題についても著者は深く深く考えていきます。なんと最終的には世界が終末を迎えるという事態にまで発展するのですから!

ここの展開は特に面白かったので、ぜひご自身で本を手に取って読んでほしいです。

後半…

後半で印象に残っているのは「産む女」の章。出産がリアルに綴られています。

出産と言えばのあるあるシーンを思い起こさせつつも、実際に描かれている(もはや書かれているというより描かれています)のはリアルな実情。

たとえば、陣痛が来たら夫が慌てて「すぐに車の用意をする!」というシーンが頭を過ぎりますよね。ドラマで見たことのあるシーンです。

でも実際は陣痛が始まった瞬間に病院に行けるわけではありません。ある程度陣痛の間隔が短くなるまで自宅待機です。

ここからが出産という一大スペクタクル感動ドラマの始まりだというのに、今の私の状況はあまりにも緊迫感がない。夫も心配のしどころがわからず、リモコン片手に手持ち無沙汰感満載だ。

めちゃくちゃリアル。

わたしは里帰り出産でなおかつコロナ禍だったので立会い出産もできず、夫はそばにいませんでした。

でも、著者の言っていることはよくわかります。容易に想像できます。

陣痛を待っている間にテレビを見ていた、などと書かれているのですが「うんうん、わかる」と頷きながら読みました。

出産という人生一大イベントで非日常のはずなのに、日常にぬぅっと溶け込んでいる、あのよくわからない感覚。

陣痛がはじまってから出産が終わるまでの気持ちの変化が事細かに描かれており、当時のことを鮮明に思い出しました。

出産経験のある方なら共感しながら読める人が多そうです。あー、みなさんに読んでほしい!

普段、何かしら頭の中で考えたり感じていることがあります。でもそれを言語化することはありません。

本当の本当の自分の気持ちに気づくのがこわいからなのか、ただ考えることを放棄しているのか。

わたし自身はどちらも当てはまります。昔から「考える」ということをあまりせず直感で行動する派だったので考えることに慣れていません。

また、ある事柄についてはあえて考えるのを放棄している(本当の本当の自分の気持ちに気づくのがこわい)こともあります。

でも著者は目を背けず深く深く考え、それを言語化しています。その言語化されたものを読んでハッとさせられるのです。

あぁ、あのときわたしこんな気持ちだったんだ。

気づいていなかった、自分の本当の気持ちや考えを知ることができました。

タイトルにある通り『30と40のあいだ』の女性にぜひ読んでほしい一冊です。

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